『東京焼盡』目次

内田百閒
(1955年4月20日刊行,大日本雄辯會講談社,東京, 261 pp.)


【目次】
序ニ代ヘル心覺 1
第1章 一機の空襲警報 13
第2章 空襲の皮切り 18
第3章 神田日本橋の空襲 20
第4章 東海の激震 22
第5章 深夜の警報頻り也 24
第6章 用水桶の厚氷 27
第7章 大晦日の夜空に響く待避信號の半鐘 30
第8章 鹿が食ふ樣な物でお正月 33
第9章 殘月と燒夷彈 35
第10章 サーチライトの光芒三十幾條 37
第11章 ラヂオ取附 40
第12章 銀座の爆彈攻擊 42
第13章 立春の翌零下七度 45
第14章 丸ノ內精密爆擊の流言 47
第15章 艦載機の初襲來 50
第16章 春雪降り積もる 55
第17章 雪天の大空襲 目と鼻の近所へ爆彈落下す 56
第18章 雀 60
第19章 神田は已に無し
     春空に高射砲の白煙團團 62
第20章 無事の幾日 64
第21章 荻窪の友人の家吹飛ぶ 67
第22章 何年振りのキヤラメル 69
第23章 三月十日の大空襲 71
第24章 主治醫邸の燒け跡 74
第25章 戰戰兢兢の蜚語 月桂冠の夢 76
第26章 お粥腹の戰時浮腫
     上方名古屋の空襲にてこちらは安泰 79
第27章 三年坂名殘りの枝垂櫻
     刺戟に生きる明け暮れ 84
第28章 めんこの地雷火の樣に爆彈炸裂す 87
第29章 又空襲繁し
     最初の照明彈と時限爆彈
     恐ろしかつた四月四日の未明 90
第30章 春光の大空をおほふ敵機の大群 95
第31章 道もせに散りしく近火の火の子
     燃えながら空に浮かんで流れる庇
     四谷牛込の大半灰燼に歸す 101
第32章 息もつがずに又大空襲
     品川大森一帶の火の海
     女囚の如き勤勞奉仕 105
第33章 風聲鶴唳
     硫黃島のP51大擧來襲す
     ベネヂクチンのドオム酒 108
第34章 獨逸最後の日 半年振りのお風呂 ラヂオで苦勞する 113
第35章 「陽氣の所爲で神も氣違ひになる」
     國民生活の崩壤目ざましき許り也 119
第36章 小型機の來襲頻り也
     借り米嵩む
     四谷驛の燕の巢
     大政翼贊會消滅す 126
第37章 暫らく靜かだつた後の大空襲
     火達磨になつた敵機飛び廻る
     その前夜 135
第38章 その晩
     土手のしののめ 141
第39章 小屋暮らしの始まり
     橫濱大空襲の煙塵 152
第40章 廢墟の東京驛
     小屋の安住の三條件 158
第41章 小屋の明け暮れ
     洗ひ流しの御飯を食べる 161
第42章 大內山の森に沈む金色の夕日
     家內の無熱丹毒
     お金が有り餘りて使ひ途無し 169
第43章 夢心地の警報は甘い音に聞こえる
     雨夜の空襲警報
     日本海へ機雷投下に行く敵機 174
第44章 榮養不足の執拗な下痢
     「出なほし遣りなほし新規まきなほし」
     大阪名古屋に大型中型の爆彈投下 182
第45章 珍らしや普通の火事の火の手
     もともと無かつた物を燒失せり
     腐つた芋を食ひて家內發熱す 189
第46章 罐詰を盜んだとの濡れ衣
     雷鳴か敵襲か
     きたない灰色の夜明け 195
第47章 敵機動部隊の艦上機頻りに來襲す
     地方の諸都市次ぎ次ぎに燒亡す 200
第48章 運命とはB29である
     木ノ葉便所
     お米は昨日限りもう一粒もなし 204
第49章 八重洲口に落ちた爆彈の爆風
     B29も記憶の中の古里を燒く事は出來ない
     古い岡山の思ひ出 210
第50章 その晩の囘想
     十九年十一月以前の警戒警報の意味
     蚤に喰はれ團子ばかり食ふ
     氣候甚だ不順也 216
第51章 仰願寺蠟燭の殘り少し
     澱粉
     二ケ月振りに電燈ともる
     江戶川アパートへ移りたい 221
第52章 天龍川河口の艦砲射擊
     艦上機の攻擊繁く一日頻囘の空襲警報
     鶴見の爆彈攻擊 八王子立川水戶及び長岡富山の燒夷彈攻擊 總數六百機の來襲也
     八王子立川の夜空の赤い入道雲 228
第53章 配給所に米無し
     前橋高崎澁川の燒夷彈攻擊
     瘦せた相撲取り 233
第54章 田無荻窪の工場地帶の爆擊
     二ケ月半の垢を洗ふ行水
     廣島の原子爆彈の後なればこはい B29一機の侵入に空襲警報鳴る
     露西亞宣戰す 239
第55章 敵潜水艦下田を攻擊す
     大本營の中で書類を燒き捨てる火の手
     なほ各地の燒夷彈攻擊續く 243
第56章 戰爭終結詔勅
     八月すでにこほろぎ鳴く
     もうお仕舞かと思ふのにまだ防空警報鳴る 八月十八日がその最後か
     燈火管制の廢止 準備管制も撤廢 248